拗ねちゃった子虎
 


    ◇ おまけ



 『あ〜あ、余計なことやっちゃったよなぁ。
  いっそそのまま別れちまえって持ってけも出来たのになぁ。』

何が悲しくてかわいい後輩、それも有望株の敦くんとキミなんかの仲を取り持ってしまったかなと、
わざとらしくも聞えよがしに言ってのけ、

 『言っとくけど これ貸しだからね。』

なぁんて憎たらしいお言いよう、腐れ縁の中也へは容赦なく告げておきながら、
敦本人へのアフターケアはといや、やはりやはりそりゃあソフトにあたってた太宰であり。

「私とまで 同じようなオプション付きで恋人同士ごっこしてたと思われたのは
 本当に心外なのだからね。」

「すみませんたら。////////」

後日の翌々日、いつもの如く重役出勤をしてきた太宰と社屋ビルの手前で出会ったそのまま
お昼ご飯にと出て来たカフェのテラス席で、
こそこそッとそんなやり取りを交わし合う、探偵社の名コンビお二人で。
さすがにもう落ち着いてもいる虎の子くん。
あの後 ちゃんと仲直りもしたようで、
ふとした隙にじわりと浮かぶ幸せそうな笑みがそれを如実に物語っており。
微笑ましいやら、あまりの持ち直しようについつい悪戯心まで沸き立つような…。

 「敦くんは“下剋上”したかったわけじゃあないんだよね?」

アルバイトらしい普段着に帆布エプロンという格好のウェイトレスに
惚れ惚れするよな笑顔付きでランチメニューをオーダーした太宰から、
どさくさ紛れのような間合いでこそりと囁かれたそんな一言へ、だが、

 「下こ…なんですて?」

語彙自体に馴染みがなかったか、
それともどこへかかる言い回しかにピンと来なかったか、
何度か双眸を瞬かせ、キョトンとしつつ聞き返す敦だったものだから。

 「うん、だからね。
  ぎゅっとしたかった中也のこと、そのまま押し倒したくなったというか、
  キミの側から何やかやしたくなったというか。」

自分から言い出しておきながら、
あまり具体的な言いようはまだ早いかなと、そこで遠慮が挟まる辺り、
まだまだ幼い少年への配慮が今更入った先輩殿の気も知らず、

 「あ、それはないです♪」

にゃは〜とそれは屈託なく笑った敦少年、

 「だって、○○なことや△△」
 「………☆」

さらっととんでもない単語が飛び出しかかったその口許へ、
どこからか疾風の如くに勢いよく伸びてきた黒布がこれありて
グルグルッとうなじを巡っての巻き付いて覆う。
ぴっちりと密着した即席のさるぐつわもどきへ、ひゃあと驚いたのが虎の仔ならば、

 「昼間ひなかから淫猥な単語を垂れ流すでないわ。」

それも、我らが師の前でと。
コツコツと堅い靴音響かせ、どこからか歩み寄ってきたのは、
小ざっぱりとした街着姿の黒獣の覇王殿。
とんだ問題発言で衆目を集めなんだのはよかったが、

 「ありゃまあ…。」

この畳みかけるよな展開には笑う他なかったり。
ちなみに、後日、

 『? ああ、それなら俺も訊いた、あの晩にな。』

だからすらすらっと出てきた言い回しだったらしい危ないワードで。
何で釘を刺しとかなかったんだと、
先日は貸しだと余裕で言い置いたばかりの帽子の君に ついついムキになって噛みつけば、

 『あの敦の声で、ちょっとえっちなこと言われたもんで ついついにやけてな。』

その直後に窘めるってのはなんか間が悪い気がして、それで

 『うっかり忘れた。』
 『キミねぇっ

蛇足も良いところな後日談でございましたvv (ちょん)





     〜 Fine 〜    19.03.26.〜05.20

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 *何が言いたかったお話なのやら、
  長引いた割に畳みかけるような締めですいません。
  気の遣いようが微妙に斜め横だった敦くんと、
  そんな子の心持ち 気づかずな中也さんだったねというお話で。
  おまけは…ギャグで締めないと収まらないなぁなんて
  勝手に思ってしまった暴走です。

  実はもっと顰蹙ものな蛇足を考えてたのですが、
  それは言い過ぎだろうってことで削ってこうなりましたよ。
  そっちは墓まで持ってくので内緒です。